タランチュラの繁殖の内、交接(一般的な動物で言う交尾のこと)の仕方を解説します。
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訪問タイプ
まず、メスのつくった巣穴をオスが訪れるタイプから解説します。アジア、アフリカの地中接種、一部の半地中棲~半樹上棲種がこのタイプにあたります。つまり、バブーンやアースタイガーといったものたちはこのタイプです。
まずメスの巣は2カ月以上、 できれば半年以上前には完成しているものが良いです。糸が巣穴入り口周辺に 広く張り巡らされ、古い糸が入り口周囲にあるような感じが望ましいです。これは、オスは巣に近付いたことを、周囲にある糸で感じ取るからです。
以下、この動画に沿って解説します。動画は、自然界でメスが巣穴からでてくるタイプのタランチュラを撮影したものですが、飼育下でも大枠は同じです。動画の最初に登場するのはオスです。メスの飼育ケースにオスを導入、メスの巣穴に誘導します。誘導の際はヘラや筆などを使ってください。
(動画内時間00:55~)オスは緩やかに歩き、巣穴作りや脱皮の際にメスが出した出し糸によってメスの存在を察知します。メスの存在を感じていれば巣の少し手前で立ち止まります。
(01:28~)第1歩脚と第2歩脚、または触肢を交互に振り上げ、地面に落とすことを繰り返すことでメスに合図を送ります。動画では触肢によってドラミングがなされています。この動作は、ドラムをたたくような動きのためドラミングと呼びます。また、気が付いたメスからドラミングが行われることもあります。
(01:54~)メスにもしやる気があるならば、ゆったりとした動きで巣から現れます。2匹は、お互いの脚を触れ合わせ、軽くじゃれるように擦り合わせたりしつつ距離を測り、メスは威続するように、 あるいは襲いかかるように脚を広げ頭胸部を振り上げ、オスはそのままからだを低くし、メスの脚に絡ませていた第1歩脚をメスの上顎部分に触れさせるようにしつつ、メスの体が反り返るように促します。
メスは牙を広げますが、そこにぴったりとはまるようにオスが、 脚のメイティングフックを牙に当てることで、メスの攻撃を封じます。そして、 さらに身を深くして近づくと、第2歩脚でメスの頭胸部の下、 腹部との境の部分を抱きしめるかのように引き寄せ、身を寄せます。
(02:33~02:40)左右の生殖器を、交互にメスの外雄器へ差し入れ、そこに精子を流し込む行動をとります。この独特の生殖行動はクモ以外でも知られているが、触れ合うところが変わっているからでしょうか、交尾ではなく交接と呼ばれています。
交接がどの程度の時間で終わるかは、種類にもよるようです。短い種類では15分程度で終わることもあるし、長い種類では1時間程度かかることもあります。いずれにしろ、オスは交接が終わると、するするとメスから脚を外し、そのまま、さっと身を離して去ります。そうなったら、オスを再びブラケースへ戻しましょう。受精をより確実にするために、複数相手になるメスがいない場合は、オスを1匹のメスに対して何度も交接させたほうが良いです。ただし、オスが再び精子網を張ったことを確認してから見合わせるようにしなければなりましょう。 (精子網を張っていない→移精針に精子を確保していない)
前述のプロセスは非常に上手く行った場合を説明したもので、 何かしらが上手く行かないと、オスは食べられてしまいます。例えば、最後の脱出のシーンとて、オスがもたもたしていると、メスは思い出したかのようにオスに襲いかかり、食べられてしまいます。脚を絡ませるシーンでも、上手く絡ませないと上顎に脚を噛み付かれてしまい、躰ではメスのほうが大きいので、一瞬で力負けして、これまた食べられてしまいます。
巣穴を訪問するタイプでは、もしメスがオスに対して捕食に走る場合、まず人間が間に入って止めようとしても間に合いません。そもそも危ないので、よほど扱いに熟達しているという自信があっても避けたほうが無難です。したがって、このタイプではオスがその能力を十分に発揮し、メスへのアプローチを成功させること、もし失敗した場合でも、食べられることなく逃げられるように、逃げやすい環境を用意しておくことが大切です。例えば、オスは逃げる時には失踪するようにして逃げるが、もし面がプラケースで、つるつるしていると、 一瞬登れずに落ちてしまったりすることがあります。そうなるとオスはそうの場で登ろうと、ばたばたと騒いでしまい、その旨をメスに感知されて食い付かれることがある。大きな飼育容器に壁面にはコルクバーグを配し、流木や枝、植物などを配した大きなビバリウムにメスを入れて飼育し、そこにオスを導入するのもよい手法です。グリーンボトルブルーや Cyriopagopus属(コバルトブルーなど)の樹上棲質向の強いアースタイガーなどの繁殖の際にはこの方法が特に有効な気がします。広ければオスにも逃げる余裕が生まれ、同じケースの中に導入し、しばらく入れたまま様子見をすることもできます。
訪問タイプ
一般的な地表棲のタランチュラつまりバードイーターはこのタイプです。南米に棲息する地表棲は、ほぼ全てがこのタイプです。
オスメスが互いの存在に気づけば、その後のプロセスは訪問タイプと同じです。以下では、お互いが気づくまでを解説します。
交接は動画内時間01:50あたりから始まります。
ケースからオスを出るように導き出し、だいたいメスから25cm以上程度離れたの安全な場所に下ろしてやると、やる気のあるオスはトコトコと歩き出し、メスのいるケースの地表に降り立ち、そのまま歩き出します。いったん止まってしまった場合は、ピンセットで脚をわずかに刺激して歩くことを促進してもよいが、オス自身にやる気がある場合、外敵が周囲にいない(飼育者のことである)と判断すれば、メスを探すために再び歩きだします。
メスもこれを感知すると、同じように反応することもありますが、気づかないままでいることが多いです。オスはだんだんメスに近づきますが、この時、メスが別の方向を向いていると、オスの接近を敵ではないかと感知してくるりとそちらへ向き直ります(つまり、できるだけメスの目線がオスを見るように導いたほうがいい)。オスはからだを独特のリズムで揺らしたり、ドラミングをしたりしてメスに信号を送ります。このときメスが気づき、メスにもやる気があれば、メスはそちらをくるりと向き直り、あるいは最初から向かい合っていればそのまま進みます。その後は訪問タイプで解説したのと同じ流れです。
ある程度の経験を緩むと、どういう状況の時に大丈夫で、どういう状況の時にダメなのか、判断することができるようになり、オスの助けが必要だと思った際には、ヘラまたは筆などを使ってメスの攻撃を飼育者が遮断してやることができなくはありません。ただ、攻撃なのか、お互いに近づこうとしているだけなのかを判断するのは難しいです。 「明らかに速度とそぶりが異なるのだが、メスが襲いかかったのだと完全に理解してから手を出すのでは遅いし、その段階で割って入ったの では、個体を傷つけてしまう危険すらある。動画ではピンセットをうまく使ってオスを守っていますが、ヘラなどのほうが傷つける心配はありません。
動画のあんまりよくない点を1つ言います。動画のようにオスを直接メスのケースに入れてしまうのが楽ではあります。ただ、このタイプの交接は、できれば予めメスが住んでいる大きめの飼育容器にオスを導入し、オスがメスに近づいて行き、そこから交接へと移行するのが無難です。というのもタランチュラは匂いを感じることができますから、互いの匂いを十分に認識させた上で交接に臨むのが一番安全な気がします。(前日から、オスを小さいケースに入れて、メスが入っている大きいケースに入れておくということ)
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